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特定の書籍における独特な香りについての考察

暑中お見舞い申し上げます。近くにある神社のそばを通ると、蝉の声がわんわんと響いて、音の中に閉じ込められたような気分になりました。
今回は、また香りに関するご質問をいただきました。

『はじめまして。ニオイのことで質問をしたくご連絡してみました。
漫画本の“はだしのゲン”をご存知でしょうか?小学生の頃に学校の図書館で読んだこの本が独特のニオイを放っていたのです。他の本とは全く違いました。
大人になってから友達に聞いてみると、同じように思っていたと言うのです。
独特の匂いと内容の恐ろしさが合わさって、私にとっては“特別な存在”の本でした。
このニオイって何でしょうか?少し漠然とした質問ですみませんが、お答えいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。』

ご質問ありがとうございました。私なりの考察をお伝えします。
書籍から発せられる香りの基になっているのは主にインクと紙で、当然、種類によって香りは異なります。書籍はジャンルによって様々な種類のインクや紙が用いられており、例えば、写真集と文庫本とでは明らかに香りが異なります。また、同じインクでも色によって微妙に匂いが異なることも考えられますし、時代の変遷とともに使われる原料も変わってきていることを考えますと、例えば同じ書籍を増版した場合でも、昔と今とでは匂いに違いが生じることも十分あり得ます。
更に、匂いを構成する要素と致しまして、“経年による変化”が考えられます。時間が経つことでインクが酸化したり、紙にカビが発生するなどして、出版当時から匂いが変化することもある訳です。こちらも、増版された場合の、初版と最新版とで匂いが異なる要因になり得ます。これらも考慮致しますと、同じ書籍でもその匂いに対して抱くイメージが人によって異なる場合、その方々の“世代”や書籍の置かれた“環境”が関係している可能性がございます(例えば、「その書籍が初版だったか否か」「書籍の保管条件がどうだったか」などです)。つまり、特定の書籍に対して複数の方々が同じイメージを抱いているのなら、その方々が同世代だったり、似たような保管条件(図書館など)だったことが原因かもしれません。
なお、以前にも触れましたように、嗅覚と記憶とは密接な関係がございます。書籍に対する思い入れや記憶が、当時嗅いだ書籍の香りと深く結び付き、「独特な香り」というイメージをより強固なものにした可能性もございます。
これらの様々な要素が重なった結果、『はだしのゲン』に独特な匂いを感じるに至り、また、同じイメージを持つ方々が周りにいらっしゃったのではないかと推察致します。

あらゆるものに香りがあり、その香りが記憶に深く結び付くこともございます。
ご質問がございましたらぜひご連絡ください!

本の匂い

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