消えない香りを作ることは可能か

消えない香り01

 こんにちは!先日、友達から蝋梅(ロウバイ)の小枝をもらいました。黄色く光沢のある小さな花が爽やかな香りを漂わせています。花瓶に挿して芳香を楽しんでいたのですが、当然ながら、しばらくすると枯れてしまいました。日に何度も嗅いだあの香りがもう楽しめないのは少し残念でした。
 今回は『消えない香り』のお話です。

 香水や芳香剤の香りが消えずにずっと残ってくれればいいのに…と思われる方もいるかもしれません。“香り”というのはとどのつまり、空気中に発せられた成分(揮発成分)を嗅覚で捉えることで感じられるものですから、物体から発せられる成分が無限大でない以上、半永久的に香り続けるのというのは理論的に考えにくいことなのです。
 一方で、香りにも、揮発しやすいもの、揮発しにくいものがあり、香水や芳香剤はこれらを巧みに組み合わせることで、魅力的でオリジナリティのある香りを作り出しているのです。香りの世界では、揮発しやすい順に『トップノート』『ミドルノート』『ラストノート』と3つに大別されます。『トップノート』は“フレッシュ”“爽快感”という印象を受ける香りが特徴的で、柑橘系やローズマリーなどの香りに多く見られます。『ミドルノート』は香り全体の軸となるもので、“ウッディ”“スパイシー”が印象的なミントやジャスミン、ジンジャーなどの香りに多く見られます。『ラストノート』は文字通り最後まで残っている香りで、“甘く”“重い”印象のある香りが多く、代表的なのはバニラやカカオなどの香り成分です(※香りは複数の成分で構成されているものがほとんどですので、柑橘の香りやバニラの香りが、『トップノート』や『ラストノート』“のみ”で構成されている訳ではありません)。つまり、香水や芳香剤などの商品におきましては、使い初めから終わりまで全く同じ香りが続くのではなく、徐々に変化している訳です。従いまして、各社はこの「香りの変化」という特性を十分に理解・計算した上で、「どのように変化させるか」を考えて香りの調合を行っているのです(単に“消えにくい”香りを作るだけでしたら『ラストノート』に特化した香りにすれば良いのですが、それではバリエーションを生むことは難しく、また人によっては“甘ったるい”印象を持たれる方もおられるので、香水や芳香剤としてはなかなか難しい訳です)。
 また、そのままではすぐに揮発してしまう香りを永く持続させる為の技術も様々ございます。その1つが柔軟剤にも用いられている『マイクロカプセル』と呼ばれる技術で、香り成分を微粒子の素材で包み込むことで、少しずつ揮発するようになっております。また、『マイクロカプセル』は外部からの刺激によって、包まれている香りを強く放出する特徴がございます。柔軟剤を使用した時に、「香りが長期間続く」「衣類を軽く叩いたり擦ったりすると香りが強まる」のはこの為です。
 このように、“消えない”香りというのは非常に難しいのですが、香りの特性や技術を上手く利用することで、“消えにくい”香りは充分可能なのです。

 いつまでも消えない香りがあれば…と思う気持ちはありますが、花も、そこから漂う芳香も消えていくからこそ、いつまでも魅力を失わないのかもしれませんね。

消えない香り02